日新製糖(2117):砂糖はどこまで甘いか?
先日は当社の魅力的な「配当政策」についてみました。本日は事業環境についてみていきたいと思います。
縮小する製糖業界
当社が昨年の5月に開催した中期経営計画説明会の資料によると、「国内における砂糖の総需要量は、消費者の低甘味嗜好、加糖調製品の 増加等により10年間で9%減少」とのことです。数字で見ると緩やかに右肩下がりです(下表)。
規模が小さいながら加糖調製品*1が伸びており、「砂糖・甘味」の需要全体の落ち込みが緩和されています。
<中期経営計画説明会資料より作成>
このような事業環境の中での当社業績ですが、売上高は減少トレンド、営業利益は何とか横ばいを維持しているように見えます。
<中期経営計画説明会資料より作成>
ドゥ・スポーツプラザ運営
「その他」で集計されているのは、健康産業事業、港湾運送事業、冷蔵倉庫事業。
健康産業事業では「ドゥ・スポーツプラザ」の経営を行っています。2015年度は売上高2,135百万円、営業利益111百万円。店舗は東京(江東区)2、埼玉2、群馬1店舗となっています。
恐らく、なぜスポーツクラブの運営など行っているのかと聞かれるのでしょう。『豊かで快適な生活の実現のため、「食」と「健康」で貢献する』というミッション(基本方針)に沿った事業であると社長が説明会動画で強調していました。今後はM&Aも活用して徐々に拡大していく方針のようです。
中計通りなら高配当が続く
昨年5月に公表された中期経営計画では2019年度までの数値目標が公表されましたが、今期の業績予想は第2四半期に修正されています。売上高、当期純利益がそれぞれ500百万円、300百万円上方修正された一方、営業利益、経常利益が100百万円下方修正となっています。
下表の一株当たり配当(DPS)は今期の修正予想のEPSと当社の配当基準(配当性向60%または株主資本配当率2%のいずれか大きい金額)により予想したものです(赤枠内)。
会社の計画を前提にすれば、現在の株価水準でも3%以上の高配当利回りが維持される見通しとなっています。ただ、各数値を見ると単純に売上、利益が増えるよう頑張ります、といった数値を並べただけの印象もあります。その点だけは要注意です。地味ですが粗糖の市況にも注意していきたいと思います。
<中期経営計画説明会資料より作成>
TPP法案可決・成立で制度は安定性を増す
TPPにおいて甘味資源作物は北海道の甜菜糖、鹿児島・沖縄のさとうきび農家を保護するため、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品」とともに重要5品目とされていました。つまり、細かな関税の入り繰りはあっても、糖価調整制度の枠組みは変わらず維持されることが決まっていました。
今回、TPP自体はご破算になりましたが、TPP関連法案は可決・成立されて、「国産甘味資源作物の安定供給を図るため、加糖調製品を新たに糖価調整法に基づく調整金の対象とする」ことが決まりました。
上記の表のとおり、砂糖の需要が減少するなかで加糖調製品が伸びていましたが、この加糖調製品は、従来、糖価調整制度の対象ではありませんでした。
今回の法案でこれを制度内に取り入れることによって制度の安定性は以前より高まったといえます。
制度が危うくなれば業界に激変が起こるわけで、それが良いことか悪いことかは立場によって異なるとは思いますが、当社株主としては取り敢えずポジティブと考えられるでしょう。
この期末をどう乗り切るか?
当社株購入当初の値動きは悪く、一時は含み損が発生する状況にも陥りました。しかし、当社の資本政策に対する理解が進んだこと、直近では期末の配当権利取りに向けてだと思いますが、当社株は上昇に勢いがついてきています。
2月21日に三分の一の保有株式を売却しましたが、そこから100円も上昇してしまいました。
期末までにNISA枠で投資している分を残して売却しようと考えていましたが、NISA枠も含めた売却を考える余地も出てきました。
権利落ち後は恐らく権利落ち額を超えて下がる可能性が高いと思いますので、下げたところで本年のNISA枠で拾うということで行きたいと思います。
仮に、来期の業績予想が会社の中期経営計画通りとすると、来期は減配ということになるので、そこで売られるようであれば、そこも拾う一つのポイントとなると考えます。
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*1:砂糖に他の食品素材を加えた食品加工用原料のこと。加糖あん、ココア調製品、ソルビトール調製品などがある。主に製菓、製パン、 飲料メーカーなどで業務原料として使用されるもの。その多くは海外から輸入されている。