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伊藤忠商事(8001):配当を「保証」するだって!?

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本日は丸紅を検証したついでに伊藤忠商事(8001)について検討してみたいと思います。 というのも丸紅以外に3%を上回る予想配当利回りとなっているのは伊藤忠商事(8001)と住友商事(8053)で、なかでも伊藤忠商事は配当方針を明確に打ち出しているからです。

 

配当を「保証」する?

その配当方針とは、

「(2017年度までの中計期間は)毎期史上最高額を更新する15年度50円、16年度55円、17年度60円を下限として保証します

加えて、

「当社株主帰属当期純利益の拡大に応じてその成果を株主の皆様と共有すべく、2,000億円/年までの部分に対しては配当性向20%2,000億円/年を超える部分に対しては配当性向30%を目処」

とし、今後さらなる株主還元を目指す

 何と「保証」という表現で17年度(2018年3月期)までの配当額を確約しています。不勉強のためかもしれませんが、配当を「保証」すると宣言している企業には初めて遭遇しました。

伊藤忠商事ほどの企業がこれだけ明確に宣言をするのはその確固たる決意が感じられると感じる一方、ちょっと軽率な表現ではないかという気もします。せいぜい「下限として設定します」とか「基準として考えています」とか。

配当が60円程度(上記、17年度下限60円の水準))を、昨日終値1,581.5円でみると60円の配当は3.79%となります。

丸紅が来期どの程度の業績見通しを出してくるかにもよりますが、伊藤忠商事の3.79%を超える配当予想は期初段階では出てこないと思われます。

そうなると一旦どこかで丸紅から伊藤忠商事にスイッチするタイミングを考えても良い気がします。非資源分野の割合が相対的に大きいことや、ROAが高いことも安心感があると考えます。 

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グラウカスには要注意

ちなみに伊藤忠商事といえば、空売りレポートのグラウカスに日本で初めて「絡まれた」銘柄であることは一応頭の隅に置いておいた方がよいかもしれません。

グラウカス 伊藤忠商事売り推奨レポート要旨

(1)コロンビアの石炭事業への出資に関して15年3月期に不適切な投資区分の変更を行い、1,531億円相当の減損損失の計上を意図的に回避した

(2)中国中信集団(CITIC)を持ち分法適用会社として利益を連結業績に取り込んでいるが、CITICは中国政府系で伊藤忠は重要な影響力を持てないため不適切

(3)中国や台湾で食品事業を手掛ける頂新グループを持ち分法投資対象から外したことで、15年3月期に600億円の再評価益を計上したのには強い疑問がある

 

 素晴らしき情報開示姿勢を信じる

そんなことを書くとグラウカスの思う壺なので、若干、フォローのコメントを入れると、「当社の情報開示の姿勢は素晴らしい」ということが言えると思います。

決算説明会の動画配信、スクリプト付説明資料の開示、Q&A要旨の開示など、フェアディスクロージャー企業のお手本のような会社であると思います。

機関投資家だけではなく個人投資家も意識したフェアディスクロージャーができるかできないか。できている会社が優先的に投資対象となるような流れができると嬉しいですね。 

 

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