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FPG(7148):株主優待も魅力だが高成長は一服?

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本日はFPGについて検討したいと思います。17/9期の配当は期末一括の37.15円、株主優待もUCギフトカードと換金性も高く、総合利回りを計算すると下表の通りとなかなか魅力的に見えます。 

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タックス・リース・アレンジメント事業?

当社の事業内容を確認してみます。当社の売上はタックス・リース・アレンジメント事業が売上の90%を占めています。タックス・リース・アレンジメント事業とは、航空機・コンテナ・船舶を対象としてリース案件を組成し、中小企業に出資金を販売し、販売手数料を得るというビジネスモデルとなっており、当社ではSPC (特別目的会社)を設立して、そこから業務委託手数料を受け取っている様です。

 (1)  SPCを作って投資家に出資させる。一部は金融機関からの借り入れで資金調達してレバレッジを効かせる。

(2)  SPCが航空機・コンテナ・船舶を購入し賃借人にリースする(オペレーティングリース)

(3)  SPCの損益は減価償却のため当面の利益が大きくマイナスとなり、投資家がSPCの決算を取り込むことによって利益を圧縮(損金算入額の増加)することで初期の課税を繰り延べる。

(4)  リース期間終了後はリース物件を売却することで利益(益金)が発生する。

(5)  当社はSPCからオペレーティングリースに係る運営(組成・販売・管理)を受託することで手数料を得る。

当社がSPCから受け取る業務受託手数料は主として外貨建てなので円高は収益にマイナスに影響。

(6)  一方で、税理士事務所、金融機関と「顧客紹介に係る契約」を結び、顧客の紹介に対して紹介料を支払う。

 

中小企業の利益の圧縮(繰り延べ)のニーズ(TAX)と設備投資負担を軽減したい航空会社・船舶会社のニーズ(LEASE)をマッチング(ARRANGEMENT)させる事業なので「タックス・リース・アレンジメント事業」と呼ぶようです。より一般的にはJOL(日本型オペレーティングリース)と呼ばれているようです。

 

<(株)FPG 平成28年9月期決算短信より>

 

航空機や船舶は年間どれくらい製造されているのか?

しかし、航空機や船舶が年間にどれくらい製造されているのでしょうか。

会社側資料によると、

<設備投資ニーズ>

新造旅客機 1,659機/約14.6兆円

新造船 1,885隻/約10.6兆円

新造コンテナ 286万個/約0.7兆円 (2015年度) 

<ターゲットとする中小企業>

黒字企業30万社/100万社※  → 経常利益 16兆円

※資本金1,000万円以上1億円未満

としております。

ちなみに当社の17/9期のリース組成金額の目標は4,000億円となっています。

 

高成長から安定成長へ移行か

過去、急成長を遂げてきた当社ですが、新たなステージに入った感があります。まず、今期の業績予想ですが上期減益となっています。

会社側の説明を読むとリース組成が下期の方が大きくなっているとのことで、通期では増益となりますが、営業利益ベースで9.2%の増益は過去の成長が大きかったので減速感が感じられます。

タックス・リース・アレンジメント事業の経営数値をみると分かるようにリースの組成金額の伸び率が大きくスローダウンしているのが分かります。

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リース会社は営業CFがマイナス?

当社の安全性に関する指標をみるとまず営業キャッシュフローがマイナスとなっているのが気になるかもしれません。そこで他のリース会社の状況を確認してみます。下表の通りほとんど全ての会社がマイナスとなっています。 

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 ※各社の直近期の数値

考えてみれば当たり前のことですが、リースのための資産を取得しリース債権としてバランスシートに積みあがっていくわけですから、一般的なリースのキャッシュフローから言っても、キャッシュフローがマイナスなのは積極的に事業を拡大している状況であると考えることができます。もちろん当期利益がプラスでないとD/Eレシオの悪化に繋がり、事業の継続が危ぶまれるのは言うまでもないことです。

当社については全く同様に考えてよいのでしょうか。当社はSPCを活用し、出資金は直ちに投資家に販売しているので、純粋なリース会社よりは資金繰りが楽な気もしますが実際はそうでもない様です。

当社の連結キャッシフロー計算書をみると商品出資金の増加により、15/9期で180億円、16/9期で106億円キャッシュフローが悪化しているのが見て取れます。

今期についてはリース組成金額の伸び率が減速することから、キャッシュフローのマイナス幅は縮小するかもしれませんが、それは一方で成長の鈍化と表裏一体なのかもしれません。 

 

今のタイミングでは買入を見送り

いずれにしても、リース組成額の伸びが減速したこのタイミングでは積極的に買う気持ちは湧いてこないので、総合利回りが4%を超えるようになるタイミングまで様子をみたいと思います。  

 

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